不動産の所有権移転登記
不動産(土地・建物)の権利に関する登記は、法律で義務付けられているものではないので、相続人が被相続人から承継した不動産の所有権登記名義人を、被相続人名義のままにしておいても、法律的には問題ありません。
しかし、不動産登記制度は不動産の権利変動の過程を表す役割を担っているので、相続人がその不動産を売却等により第三者に譲渡する場合は、所有権移転登記により不動産を一旦自己名義に変更してから、当該第三者への所有権移転登記をする必要があります。
また、不動産には取得時効がありますので、被相続人の不動産を誰かが無断で占有していた場合、その占有者は占有開始の時から20年(占有者が善意無過失で不動産の所有権が自己にあると信じていたときは10年)を経過したときに時効取得を主張して、その不動産の所有権を取得することが出来ます。
取得時効が成立する前に、相続人が自己名義に不動産の所有権移転登記を行えば、時効は中断され、占有者はさらに20年間占有を続けなければ時効所得を主張できなくなります。
つまり、相続人は被相続人から承継した不動産の所有権を自分に移転登記しなかったばかりに、知らないうちにその不動産を失うこともあり得るのです!
そういう意味においては、法律で義務付けられていないとはいえ、相続によって不動産を取得した場合は、所有権移転登記をしておいたほうが安全です。
【遺産分割協議が成立した後に所有権移転登記を行う場合】
相続による不動産の所有権移転登記は、遺産分割協議で誰がその不動産を取得するかが決まった後、以下の書類を不動産所在地を管轄する登記所(法務局)に提出して手続を行います(インターネットを使ったオンライン申請が出来る法務局では、書類の提出による書面申請に代えて、データ送信によるオンライン申請が可能です)。
①登記申請書
②被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
③法定相続人の戸籍謄本
④法定相続人の住民票
⑤相続する不動産の固定資産税評価証明書
⑥遺産分割協議書(申請者以外の印鑑証明書付き)
上記書類は、市区町村役場で取得することができますが、東京23区にある不動産の固定資産税評価証明書は、都税事務所で取得する必要があります。
【法定相続分どおりに所有権移転登記をする場合】
法定相続分どおりに所有権移転登記をする場合は、上記のうち、⑥遺産分割協議書(申請者以外の印鑑証明書付き)は不要です。
不動産登記には登録免許税を納付する必要があり、相続による所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価証明に記載されている不動産の価格に1000分の4を乗じた金額です。
【相続した土地を複数に分割して、1つずつ土地を所有したい場合】
被相続人が所有していた土地を、相続人間で2つ以上に分けて、それぞれ1つずつの土地を所有したい場合は、土地を物理的に分割するための「分筆登記」を行ってから所有権移転登記を行う必要があります。
各種名義変更に関するご相談は、当市民法務相談室へ。