遺言に関する基礎知識

 
【遺言の法的拘束力】
遺言によって法的拘束力を持つ事項は、以下のとおり法律で定められています。
①相続分の指定および指定の委託
②資産分割方法の指定および指定の委託
③期間を定めた遺産分割の禁止
④相続人相互間における担保責任の指定
⑤特別受益者の持ち戻しの免除
⑥遺贈の遺留分減殺方法の指定
⑦推定相続人の廃除とその取り消し
⑧遺贈
⑨寄付行為
⑩信託の設定
⑪生命保険金受取人の指定
⑫子の認知
⑬後見人・後見監督人の指定
⑭遺言執行者の指定および指定の委託
⑮祭祀承継者の指定
 
【遺言の種類】
遺言には、普通方式と特別方式がありますが、私たちが日常生活の中で作成するのは、普通方式の遺言です。普通方式の遺言には、次の3種類があります。
1.自筆証書遺言
2.公正証書遺言
3.秘密証書遺言
 
【自筆証書遺言について】
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付および氏名を自筆し、押印しなくてはなりません。他人が書いたものや、パソコン、ワープロ、盲人点字器で作成したものは無効です。
遺言の内容を変更するときは、遺言者が変更する部分を指示し、変更した旨を付記した上で署名するとともに、変更した部分には印を押さなくては、その変更内容は有効とはなりません。
自筆証書遺言の作成には、遺言者以外は関わらないので、その日付が重要視されます。従って、「平成21年7月吉日」といった表示は、特定の日を表示していないので、無効なものとされます。
氏名は遺言者が特定されるものである限り、通称や芸名などでも良いとされています。
押印は実印、三文判あるいは拇印でも差し支えないとされています。
遺言書の様式は特に規定されておらず、1通の遺言書を数枚の紙に書いた場合でも、契印や編綴等がされている必要はありません。
 
【公正証書遺言について】
公正証書遺言は、原則として次の手順で作成されます。
①証人2名以上の立会いにより、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述する
②公証人が①の口述を筆記する
③公証人が②の筆記内容を遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させる
④遺言者と証人は、筆記が正確であることを確認の上、証書に署名押印する(遺言者
  が署名できない場合は公証人がその旨を付記して署名に変えることができます)
⑤証書が上記方式に従って作成された旨を付記し、これに署名押印する
 
公正証書遺言は「遺言者の口述を公証人が筆記する」形式ではなく、事前に遺言者が作成した書面に基づき公証人が筆記を行い、遺言者との面接時に遺言の趣旨を確認するとともに、筆記内容を遺言者に読み聞かせるという手順で作成することも可能です。
口がきけない遺言者は、公証人と証人の前で、通訳人を介した遺言の趣旨の申述あるいは自書によって口述に代えることができます。
 
【秘密証書遺言について】
秘密証書遺言は、原則として次の手順で作成されます。
①遺言者が遺言を自筆あるいはパソコン、ワープロ等で作成し、その証書に署名押印
  する
②遺言者が遺言を封筒に入れて封じ、証書に用いた印章によって封印する
③遺言者が公証人1名、証人名以上の前に遺言の入った封書を提出し、自己の遺言
  書である旨ならびにその筆者の氏名・住所を申述する
④公証人が、遺言が提出された日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者
  および証人が記名押印する。
秘密証書遺言には、封紙に公証人が日付を記載するので、遺言者が遺言に日付を記載しなくても無効になることはありません。
 
【認知症の人の遺言について】
認知症の人(成年被後見人)でも、物事を認識する能力が一時回復しているときであれば、医師2名以上の立会いのもと、遺言することができます。
 
【証人・立会人の資格】
次の者は、証人・立会人になることはできません。
①未成年者
②推定相続人、受遺者およびその配偶者ならびに直系血族
③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および雇人
 
【各種遺言のメリット・デメリット】
それぞれの種類の遺言のメリットとデメリットは以下のとおりです。
○自筆証書遺言
1.メリット
 1)遺言の存在・内容が他人に知られない
 2)費用がかからない
 3)証人を用意する必要がない
 
2.デメリット
 1)自筆、日付や氏名の記入といった必要条件を満たしていないと無効になる
 2)遺言の紛失・改ざん等の恐れがある
 3)遺言書開封時には家庭裁判所の検認が必要とされる
 
○公正証書遺言
1.メリット
 1)公証人が関わっているので、遺言が無効になることはない
 2)原本が公証役場にあるので、遺言の紛失等の心配がない
 3)遺言書開封時に家庭裁判所の検認は不要
 
2.デメリット
 1)証人が遺言内容を知っている
 2)公証人に支払う作成費用が発生する
 3)証人を用意する必要がある
 
○秘密証書遺言
1.メリット
 1)公証人が関わっているので、遺言が無効になることはない
 2)原本が公証役場にあるので、遺言の紛失等の心配がない
 3)遺言書開封時に家庭裁判所の検認は不要
 
2.デメリット
 1)証人が遺言の存在を知っている
 2)公証人に支払う作成費用が発生する
 3)証人を用意する必要がある
 
【その他注意点】
2人以上の遺言者が、1通の遺言書を「共同」で作成することはできません。たとえば、夫婦共同で1通の遺言書を作成しても無効です。ただし、1通の遺言書で2人以上の遺言者がそれぞれ独立した形で遺言している場合や異なる遺言者による遺言2通が1通の封書に同封されている場合は有効です。
 
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