遺産分割協議の際に留意すべき点

 
1.遺産分割協議が成立するための要件
遺産分割協議が成立するためには、下記の要件を満たしている必要があります。
1)遺産分割協議を行う前に、相続財産と相続人を確定していること
2)遺産分割協議には、相続人全員(包括受遺者を含む)が参加していること
3)相続人の中に未成年者がいるときは、未成年者一人ひとりに「特別代理人」を選任すること
4)相続人全員の合意が得られていること
 
2.遺産分割協議書は相続人全員が署名(または記名)・押印
遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名(または記名)し、実印による押印をします。
 
3.遺産分割協議のやり直しは主張できない
遺産分割協議成立後に、遺産分割内容に不満が出てきたりしたとしても、遺産分割のやり直しを主張することは出来ません。ただし、全員の合意があれば、再度、遺産分割協議を行うことは出来ます。
 
4.不動産価額の評価
遺産の中で大きな割合を占める不動産をどう評価するかは重要な問題です。正確な価額を求める場合は、費用がかかりますが、不動産鑑定士に依頼すればよく、大体の相場がわかればよいという場合は、地元の不動産業者に訊いたり、周辺の不動産価格情報を収集すればよいでしょう。
 
5.生命保険金の扱い
遺産分割においては、受取人が特定の相続人になっている生命保険金の請求権は、相続財産には含まれませんので、相続人全員で生命保険金を分割する必要はありません。ただし、判例上、遺産分割にあたっては、生命保険の受取人となった相続人は「特別受益者」とされ、相続分から生命保険金が差し引かれることが多いようです。
 
6.債務の相続
被相続人の債務は、相続人全員が相続分の割合で引き受けることになります。相続人間で、特定の相続人が債務のすべてを相続する取り決めをしたとしても、それによって債権者には対抗することはできません。
 
7.遺産分割協議がまとまらない場合
相続人間の話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることが出来ます。
調停は家庭裁判所の調停委員会(審査官+2人以上の調停委員)の助けを借りながら、当事者が話し合う場です。ここで協議がまとまった場合は、確定判決と同様の効力を持つ「調停調書」が作成され、これに基づいて遺産分割を行います。調停を行っても話がまとまらない場合は、審判に移行します。
審判では、審判官が当事者の主張を訊き、証拠調べを行い、財産や相続人に関する一切の事情を考慮した上で、分割方法を決めます。このように審判官が下した審判には、法的強制力があります。
当事者が審判に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告の申立を行い、高等裁判所でさらに争うことになります。
 
 
「遺産分割でもめたくない」という方は、当市民法務相談室にご相談ください。
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